大昔から便秘はあったようで、古代エジプトや中国の医学書にも便秘についての記載がありますし、日本でも「うんち」という言葉は奈良時代には定着していたようです。現代日本では男性の2%、女性の4%ほどが便秘で、高齢になると増加します。若い人では女性が多いですが、高齢者では男女差はなくなります。
我が国で頻用されてきた大腸刺激性下剤は大腸の動きを促進する作用をもち、市販薬も多く、センノシド、プルゼニドやピコスルファート、ラキソベロンなどが代表薬です。しかし長期の連用により腸管の動きが低下し却って便を出す力が落ち、薬が効きにくくなる弛緩性便秘になると考えられています。よって刺激性下剤は頓服か短期間の服用にすべきです。
浸透圧性下剤は便の水分量を増やし柔らかくする作用を有します。代表薬の酸化マグネシウムは安価で有害事象も少なく、第一に使用されることが多いです。ただし腎機能が悪い方、投与量が多い場合、高齢者などで血液マグネシウム濃度が上昇することがあり、場合によっては服薬中止しなければなりません。
他には便秘型過敏性腸症候群の治療薬、腸管運動を亢進させる薬、大黄甘草湯、麻子仁丸、大建中湯などの漢方薬が便秘治療に用いられることがあります。坐薬や浣腸の治療薬もあります。
さて、ここ数年で新しい便秘治療薬が増えました。上皮機能変容薬アミティーザ、リンゼスは小腸の水分分泌を促進して便を柔らかくして排便を促します。その他グーフィス、モビコール、ラグノスゼリーほか新しい便秘治療薬によって従来のお薬では十分改善しなかった患者さんの多くで便秘症状の改善が得られています。
大腸癌などにより腸管が狭くなって便秘になることがあります。急に便秘が生じた場合、体重減少、血便、腹部のしこりがある時や50歳以上の方、大腸癌の既往や家族歴がある方は、大腸内視鏡検査や当院で行っている大腸CT検査などで検査をすることが望ましいです。
また糖尿病、甲状腺機能低下症、脳血管障害、パーキンソン病、うつ病など他の疾患や、降圧剤、パーキンソン病治療薬、抗うつ剤、睡眠薬、アレルギー治療薬、モルヒネなどの鎮痛剤といった様々な薬剤が便秘の原因になりえます。かかりつけ医に通っている方は先生に相談されるとよいでしょう。
便秘の症状改善には、三食規則正しい適切な食事、適度な水分・食物繊維・乳酸菌食品などの摂取、筋力維持を目指し適度な運動、規則正しい生活、十分な睡眠時間、腹壁マッサージなどが有効とされています。若い女性などでは便意を我慢しないことも大切です。うつ・不安などの心理的異常が影響することもありますので、便秘のことを必要以上には気にせず気持ちも少しゆったりと持たれることを勧めます。
2020年3月 消化器内科 木下
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