アニサキスにご用心(最近の食中毒事情)

 

アニサキスにご用心(最近の食中毒事情)

2023.06.22
中央検査部

10年前に食中毒として多く報告されていたのはノロウイルスとカンピロバクターでした。ノロウイルスは感染者の吐物からも感染しやすく、2次感染に注意が必要です。いずれも最近では新型コロナウイルスの影響も含めて減少していますが、反対に増加しているのがアニサキスなど寄生虫による食中毒です。アニサキスの件数は10年前ではノロウイルスやカンピロバクターの半数以下でしたが、2022年には倍以上の報告がなされています。

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アニサキスは、サバ、アジ、カツオ、イワシ、タラ、イカ、サンマなど魚介類の内臓に寄生し、その魚介類が死亡すると内臓から私たちが食する筋肉部分に移動します。大きさは体長が23cm、幅が0.51mmぐらいですので、肉眼でも少し太い糸のように観察することができます。人がアニサキスを摂取すると、多くは胃の粘膜に刺入して食後数時間から十数時間後にみぞおちの激しい痛みや吐き気、嘔吐などの症状があらわれます。アニサキスは人に感染してから1~3週間程度しか生存できませんので自然に排出されるといわれていて、保存治療で症状が軽快することもあります。しかし、内視鏡下で虫体を摘出することで、多くの場合は症状が改善します。また、再感染によるアレルギー反応によって蕁麻疹や血圧低下、呼吸不全、意識消失などアナフィラキシー症状を認めることがあります。アレルギー反応は死んだ虫体でも反応するといわれていますので注意が必要です。

アニサキス感染の予防方法ですが、基本的には魚介類の生食を避けることです、できれば60℃で1分以上加熱してから食べましょう。どうしても生食したい場合、新鮮なうちに内臓を摘出することで筋肉部分への移動を防ぐことができますが、漁獲後に移動している可能性がありますので注意が必要です。醤油やワサビ、酢などは、料理で使用する程度では効果がありません。養殖された魚介類では、環境や餌などの管理が徹底されていることもあり、感染リスクはかなり少なくなります。また、生食とは若干意味合いが違いますが、-20℃で24時間以上凍結すると感染性がなくなりますので、解凍後に加熱せず食べることが可能です。しかし、一般的な家庭用冷凍庫は-18℃から-20℃を維持するように設計されていますが、霜取りのために1日数回温度が上昇する機種もあります。また対象物が目的の温度に達する時間、扉の開け閉めによる温度変化などを考慮すると48時間以上の凍結が望ましいと考えられます。

最近ではアニサキス増加の問題点から、スーパーや鮮魚店などでも安全な食品提供に取り組まれています。しかし、もし魚介類などを生食し、食中毒症状を認めて医療機関を受診する際には、直近の食歴を伝えるようお願いいたします。早期診断、早期対応、また同じ食材を食べた方への注意喚起に繋がります。

日本人は刺身や寿司など海産魚介類を生食することが大好きです。特にサバやイワシが多いといわれていますが、アジやカツオなどでも感染が報告されていますのでご注意ください。

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