診療科・部門・センターのご案内

心臓の手術 Q&A

  • 心臓の手術は他の手術に比べ特別なのでしょうか?その特徴について教えて下さい。

    心臓は筋肉でできた袋でこの袋が縮んだり、広がったりすることで血液を吸い込んだり、送り出したりするポンプの働きをしています。心臓には4つの袋(部屋)があります。右心房、右心室、左心房、左心室といいます。全身で酸素が使われ酸素の少なくなった血液が右心房へ戻り、右心室へ入りそのポンプの作用で肺動脈を経由して肺へ送られます。肺で酸素をいっぱい含んだ血液に変わり、肺静脈から左心房を経て左心室に流れ込み、左心室の強力なポンプ作用で大動脈を経て再び全身へ血液が供給されます。心臓を手術するには心臓の壁の一部や、心臓の表面の血管あるいは心臓に近い大血管を切開する必要があります。心臓が拍動して、血液が流れたままの状態で単純に切ってしまうと、大出血し全身の血流が途絶え命を落とします。従って心臓を手術するには、心臓の中を空っぽにして切開し、しかも中を手術する間全身の血液循環を維持しておく必要があります。これを可能にするのが人工心肺装置と呼ばれる機械です。先に申し上げましたように心臓と肺は対になって血液が巡っていますので、この装置で心臓と肺に血液が流れ込まないようにし、心臓と肺の働きを肩代わりさせ、全身の循環を制御しておいて心臓を手術するという訳です。さらに、心臓が拍動して動いたままでは心臓内、心表面の手術操作が非常に難しいので、心筋への血流も遮断した上で、心筋を冷却し、心筋内へ心筋保護液という特殊な液を流して新陳代謝を押さえ心拍動を停止させ、いわば心臓の筋肉を冬眠状態にさせます。これにより心臓の筋肉に障害を与えることなく数時間の心内操作が可能となります。このように、心臓手術では人工心肺装置を取り付けたり、取り外したりという処置が必要であり、動きを止めて手術している心臓そのものは言うに及ばず、心臓とともに機能を止めている肺、さらに人工心肺装置で全身の臓器の血液循環を制御するため心・肺以外の内臓、組織の循環にまでも気を配る必要があります。このため、一般の胸部や腹部の手術に比べると、手間がかかり、時間がかかりさらに手術対象となる心臓だけにととどまらず、いわば全身のすべての内臓、臓器に多少とも負担がかかり、それによる危険性を常に考慮しておく必要があるという特徴があります。

  • 人工心肺を使った心臓の手術のやり方、手順を、もう少し具体的に詳しく説明していただけますか?

    全身麻酔をかけた後に、心臓に到達するためにまず胸を切開します。ほとんどの場合胸骨正中切開法が行われます。胸の中央で鎖骨の付け根真ん中より数cm下の部分からみぞおちの少し下までまっすぐ縦に皮膚を切開します。次にその下層にある胸骨という縦に長細い板状の骨を真ん中で縦割りに切ります。特殊な器具で肋骨とともに縦に割った胸骨の隙間を広げ、その下で心臓を包む袋城の膜(心嚢)を切開すると心臓が見えます。次に、人工心肺装置を装着します。上半身と下半身から大静脈を経て右心房に帰る血液を、静脈に太いチューブ差し込みこれを伝って装置本体へ引いてきます。装置内で血液を酸素化しポンプを用いて血流に勢いをつけ、またチューブを使いこれを左心室から出てすぐの大動脈(上行大動脈)へ差し込み再び全身へ血液を送り込みます。大動脈の基部で血管を器具ではさんで心臓側へ戻る血液をせき止めて(大動脈遮断)、心臓を空にして冷却し、心筋保護液を流して拍動を停止させます。ここで初めて本来の目的である心臓に対する手術操作が行われます。心内の処置が済めば、心臓への血流を戻すとともに温度も戻すことで、拍動を再開させます。心臓が自分の力だけで十分に全身の血液環流ができるまで回復すれば人工心肺取り外し、出血がないことを確認して、胸骨、皮膚を閉じて手術が終了します。

  • 心臓の手術にはどのような種類の手術があるのですか?

    狭心症、心筋梗塞に対して心臓の表面を走る冠状動脈の血流を別の道筋を(バイパス)作ることで再建する冠動脈バイパス術、心臓弁膜症に対して弁を修復したり(弁形成術)、人工弁に取り換えたり(弁置換術)する手術、また厳密には心臓そのものに対する手術ではありませんが、心臓に近い大血管である大動脈や肺動脈の病気、大動脈瘤や大動脈解離、肺動脈狭窄に対する人工血管置換術や血管形成術が代表的なものです。その他、先天性の心疾患(生まれつきの心臓の構造の異常:心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、肺動脈狭窄症、ファロー四徴症など)に対して修復をする手術や希ですが心臓内にできた腫瘍に対する摘出術もあります。また最近では、頻脈性不整脈(心房細動など)に対する手術(メイズ手術)や、重症の心不全に対する補助人工心臓の植え込み手術、心臓の筋肉の一部を切り取る心筋切除術(バチスタ手術)や心臓移植なども行われています。このところ心臓の手術や心臓外科医に関する話題が新聞、ニュースをはじめドキュメンタリー番組やテレビドラマでも取り上げられる機会が多くなり目にしたり、耳にされたことがある方も多いかと思います。

  • 素人が「心臓の手術」と聞くと、まず怖いあるいは恐ろしいという気がするわけですが、心臓の手術の危険性について教えて下さい。

    人工心肺装置を使用するとき、血液は人工的なチューブや機械の中を通ることになります。血液は異物や空気に直接触れるとすぐに固まるという性質がありますので、何もせずに人工心肺を作動させると装置の中で血液は固まりたいへんなことになりますので、人工心肺使用中は抗凝固剤という薬を投与して血液をさらさらにして固まらないようにさせます。心内の手術操作が終わり人工心肺をはずした後で、中和する薬剤を投与し血液をもとの性質に戻すのですが、凝固能の正常化は完全でなかったり、個人差があるので、心臓の手術後にはどうしても出血が問題になる場合があります。また心臓を空にして、拍動を停止させて心内の手術操作を行い、終われば心臓を冬眠から目覚めさせて活動を再開させるのですが、たちまちにもとの力まで回復するわけではなく、復活には数日が必要です。この間は収縮力が手術前より低下しており、強心剤などの薬剤やひどい場合は心補助装置を用いて治療します。この術後早期のいわば人工的な心不全を乗り切れるかどうかが心臓手術の最大のポイントです。その他、人工心肺を作動させる際、上行大動脈にチューブを差し込んだり、大動脈を遮断する操作が必要ですが、こういう操作をした部位で大動脈壁から動脈硬化病変のかけらや組織片がはずれて流れ飛んで脳の血管に詰まり脳梗塞をおこしたり、心以外の他の臓器に術前に弱いところがある患者さんでは、術後早期の人工的心不全や人工心肺による非生理的血流が影響して臓器機能障害をきたすことがあります。また人工心肺による非生理的循環は体力的にも大きな負担となり、免疫力の低下を招くこともあり、術後の感染も問題となります。以上のような要因で、心臓手術の技術は進歩したとはいえ、どうしても手術を乗り切れない患者さんはおられます。手術死亡率はおしなべてみても数%、病気によっては10%ほどあります。しかし一方で、ここが肝心なところですが、心臓手術を必要とする患者さんは、手術を受けなければ病気のためにごく普通の日常生活が送れなかったり、死亡する確率が高いわけですから、病気を克服して、命を永らえ、生活の質を確保するために心臓手術の有する危険性の壁を乗り越える必要があるのです。

Access
最寄り駅

大阪メトロ谷町線「天満橋駅」下車
1・3番出口より徒歩約5分

京阪電車「天満橋駅」下車徒歩約5分

JR東西線「大阪城北詰駅」下車徒歩約15分

住所

〒540-0008 大阪府大阪市中央区大手前1-5-34

アクセス情報を見る